米国サイバー戦略の分析(柱3)

柱3は、「強さを通して平和を保つ」です。
これは、さらに、「責任ある国家行動の規範によるサイバー安定性の向上」と「サイバースペースで許容されない行動の帰属を明らかにし、抑止する」にわけて論じられます。

「責任ある国家行動の規範によるサイバー安定性の向上」では、「世界的なサイバー規範の遵守を奨励する」ことが優先事項であるとされています。国際法と責任ある国家の行動についての自主的な拘束力のない規範は、それを遵守することによってサイバースペースでの予測可能性や安定性を促進することが述べられています。

「サイバースペースで許容されない行動の帰属を明らかにし、抑止する」では、この意味が「悪意あるサイバー行動に対して防止、対応、抑止のためのすべての道具が利用可能である。これは、外交、情報、軍事(キネティックおよびサイバー)、経済的、諜報、帰属の公表、法執行能力を含む」ものとされています。
この表現でもって、トランプ政権は、サイバー反撃を許容するように、政策を変更したと報道されているようです。
私は、個人的には、オバマ政権からのポリシを変更するものではない、と認識しています。

  • このための優先事項としては、客観的/協調的なインテリジェンスによるリード・制裁を課す・サイバー抑止イニシアチブを構築する・悪意のあるサイバーインパクトと情報操作があげられています。
    「客観的/協調的なインテリジェンスによるリード」においては、情報コミュニティは、悪意ある行為の特定と帰属決定にすべてのサイバーインテリジェンスを用いて世界をリードしていること、この結果は、世界のパートナーと共有されること、が強調されています。

(コメント)行為者の特定は、identificationで、それが、どこの責任になるかを決定するのが、attributionという用語になっています。この点は、私のブログエントリでふれてますが、特定にアトリビューションを用いる用語法に対する私の違和感は、英語でも、正しかったようです。
あと、インテリジェンスコミニュティによる行為者特定の重要性は、NotPetyaのエントリでもふれました(Kaljulaidエストニア大統領のキーノートです)ので、その実務を念頭においた用語ですね。

  • 「制裁を課す」将来の悪事を抑止するために、迅速かつ透明性のある制裁(consequences)を課すこと、世界のパートナーと協同していることが論じられています。
  • 「サイバー抑止イニシアチブを構築する」制裁の実行は、同様のマインドをもった国家の同盟のもとでなされるときには、インパクトがあって、強いメッセージとなること、米国は、国際的なサイバー抑止力イニシアチブを開始するつもりであること、そのイニシアチブは、インテリジェンスの共有・責任帰属決定の支え・責任ある行動の公の指示表明・悪事行為者に対する共同での制裁実行を含むものであること、が述べられています。

(コメント)トランプ政権が「攻撃を最優先」にしたという評価は、この文章を正面からみるときに、誤解を招くものといえるでしょう。というか、実務的な活動をしらない「誤報」ということができます。責任帰属決定を公にして、行為者に対する抑止とするという実務的な対応が、重視されていること、NotPetya対応が、法と政策の観点からは、きわめてリーディングケースであったことが評価されるべきだったと思います。
日本だと、NotPetyaは、スルーされがちなのですが、そこを評価するのが、プロだと思います。

  • 「悪意のあるサイバーインパクトと情報操作」これは、選挙過程への海外勢力の介入に対しての対応になります。外国政府・民間企業・アカデミアとともに、市民の権利・自由を守りながら、適切なツールを用いて対抗していくことかが述べられています。
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