続・宇宙-サイバーセキュリティ法の最後のフロンティア その7

講演では、衛星システムに対する脅威が、どのように技術的に惹起されるかとかもご紹介しましたが、それらは、まさにチャタムハウス報告書やそれを紹介した、このブログのエントリで、ふれたところになるので省略します。

講演の最後のテーマとしては、宇宙における衛星システムの安全とサイバーセキュリティの法を考えていくことになります。

まず、この点を考えるときに、宇宙法のいくつかの原則のうちに、重要なことにふれておくことは重要なことなります。

ここで、ふれておくべき原則として「責任の一元集中方式(宇宙条約6条)」と「平和利用原則(宇宙条約4条)」をあげておきます。

宇宙条約6条は、「条約の当事国は、月その他の天体を含む宇宙空間における自国の活動について、それが政府機関によつて行なわれるか非政府団体によつて行なわれるかを問わず、国際的責任を有し、自国の活動がこの条約の規定に従つて行なわれることを確保する国際的責任を有する。(略)」と述べており、これは、責任の一元集中方式と呼ばれています。

民間の行為に対して、国家が責任を負うのは、いつなのか、ということについては、このブログの「属性について」で説明しているところです。国家の効果的なコントロールが及んでいることが通常は必要なのですが、宇宙空間における自国の活動については、国が責任主体として表に出てくるということになります。効果的なコントロールがない場合に、国家が民間の行為について責任をおう場合には、デューデリジェンスの義務をおう場合であって、それを欠いた場合とされます。このような法理との関係については、今後、調べてみたいと思っています。

 宇宙条約4条は、「月その他の天体は、もつぱら平和的目的のために、条約のすべての当事国によつて利用されるものとする。天体上においては、軍事基地、軍事施設及び防備施設の設置、あらゆる型の兵器の実験並びに軍事演習の実施は、禁止する。」と定めていて、平和利用原則と呼ばれています。1960年代には、この原則は、非軍事を意味するのか、非侵略(国連憲章のパラダイムに準拠すること)を意味するのか、という争いがありました。現在では、非侵略を意味するということで決着がついているということになります。

ここのケーススタディにおいて、民間が、通信システムを混乱させることができるということをみてきました。

これをみるときに、テロリストが衛星システムをハッキングして、経済を混乱に陥れるというTTXが作れそうに思えます。

次のエントリで、TTXをみていくことにしましょう。

 

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